【中学3年生の不登校】心理的要因による復学事例と対策

不登校支援の解決事例

運動部に所属していたこの男子生徒は、部活のメンバーとも仲が良く部活動を通じて学校生活に活力を見出していたのですが、部活動を引退した3年生の秋、突然学校に行けなくなりました。最初は風邪などの体調不良を訴えましたが、徐々に「なんとなく行きたくない」という曖昧な理由で学校を休むようになりました。

この「何となく行きたくない」というのは、心理的・情緒的な要因と我々は捉えています。

このようなケースはで学校に行けなくなるケースは決して少なくありません。進路に対する不安や思春期特有の感情の揺れが、学校生活に大きな影響を及ぼします。

しかし、早期の対応や適切な支援を行うことで、多くの場合は不登校からの復帰が可能です。この様な心理的要因で不登校になった中学3年生の具体的な事例を通じて、どのように対策を講じ、子どもが再び学校に通えるようになったかをご紹介します。

1.心理的要因とは?不登校に影響を与える内面的な葛藤

心理的要因とは?

今回の様な心理的要因による不登校は、一般的に「理由が分からないと親が感じる不登校」などを指します。心理的要因は表面的には見えづらいものです。特に中学3年生は、思春期の真っ只中にあり、感情の揺れや自己肯定感の低下が起こりやすい時期です。また、進路を控えていることから、プレッシャーや焦りも強く感じるようになります。このような内面的なストレスが、結果として「学校に行けない」「行きたくない」という状態を引き起こすのです。

たとえば、今回の様に部活動を一生懸命に取り組んできた子どもが、引退を機に自己の居場所を見失い、不登校になることがあります。これは、自己アイデンティティが「部活動」に強く依存していたため、その活動がなくなることで自分の存在意義や役割を見出せなくなる現象です。このように、心理的要因は非常に個別的で複雑ですが、根本原因を突き止めることが解決への第一歩となります。

2.不登校の原因を探る

この不登校の原因を探るため、アウトリーチ(訪問支援)でのカウンセリングを通じて彼の内面にアクセスしました。そこで明らかになったのは、部活動を引退した後、彼が自分の存在意義を見失っていたことです。部活があった頃は「部員としての自分」に強い価値を感じていましたが、その活動がなくなった途端、彼は「自分はもう何者でもない」と感じ、学校に行く意味すら見出せなくなったのです。

こうしたケースでは、表面的には「ただ行きたくない」という感情が見えますが、その背後には「自分は何者なのか」「これからどうすればいいのか」といった深い内面的な葛藤が存在します。思春期の子どもは特にこうした自己認識に敏感であり、その変化に適応できないことで不登校に陥ることがよくあります。

では、こうした心理的要因による不登校には、どのようなアプローチが有効なのでしょうか?

3.心理的要因による復学支援方法(アプローチから継続登校まで)

3-1.アプローチ:原因の可視化と受容

まず、重要なのは「原因を可視化する」ことです。今回ケースでも、彼自身が「なぜ学校に行けないのか」を理解していない状態でした。そこで、訪問カウンセリングを通じて、彼がどのように感じているのか、何が彼を不安にさせているのかを丁寧に探っていきました。

この過程では、ゲームなど趣味の時間を一緒過ごすことでコミュニケーションを重ねました。コミュニケーションを重ねることで、自分の気持ちを言語化することを手助けし、次第に「部活のない生活にうまく適応できていない」という核心にたどり着くことができました。結果訪問カウンセラーと一緒に、部活なしの自分をイメージしつつ、復学プランを組むことができました。

3-2.サポート:自己肯定感を取り戻す

次に行ったのは、「自己肯定感を取り戻す」ためのサポートです。「部活動で頑張る自分」という自己評価が失われたため、「自分には価値がない」と感じていました。そこで、彼が持っている他の側面に目を向ける機会を多く作りました。

例えば、趣味である「ゲーム」を活用したサポートを行いました。ゲームは単なる娯楽ではなく、実は多くのスキルを育む場でもあります。そこで訪問カウンセラーは、ゲームへの興味を尊重しつつ、彼との信頼関係を深めるために一緒にゲームをプレイする時間を設けました。ゲーム内でのチームプレーや協力作業、他のプレイヤーとのコミュニケーションを通じて、自然に「自分の役割」や「他者との協力」の重要性を学びました。

さらに、ゲームをしながらの会話の中で、自分の気持ちを表現しやすい環境を作りました。ゲームに没頭する中で心を開き、学校生活に対する不安や自己肯定感の喪失に関する悩みを少しずつ話すようになったのです。このように、ゲームを通じて感じていたプレッシャーを軽減し、同時にチームの一員としての「達成感」や「貢献感」を体験させることで、彼の自己肯定感を徐々に回復させることができました。


結果として、ゲーム内での成功体験が、現実の生活にも良い影響を与え、再び自分の価値を見つけ出すきっかけを得ることができたのです。

3-3.復学までのプロセス

このような支援を通じて、2週間の登校準備期間を経て学校に戻れるイメージを取り戻せました。登校準備期間では、部活を引退した同級生たちと交流する機会を設け、彼が「自分だけが取り残されているわけではない」ということを実感できるようにしました。これにより、彼は少しずつ自信を回復し、登校予定日に訪問カウンセラーと登校できました。

また、継続登校ができるようになると、進学に対する不安もでてきましたが、彼には具体的な進路相談も含む訪問カウンセリングを継続することでサポートしました。

彼が進学後にどのような学校生活を送りたいのか、どのような目標を持っているのかを話し合い、具体的なイメージができないことに不安をもっていました。これは中学三年生での復学をするケースよく見られるケースです。サポート手順としては、漠然とした不安などは考えないようにしてもその不安が低減させることが難しいのです。そのため、まず受験に対して本人が動き出すことで不安が少なくなることを理解させ、本人の選択として塾にも通うことをきめました。

通常、再登校後は半年程度塾などの追加の勉強を避けますが、本人の強い意志もあり、再登校後一か月で塾に通い受験勉強などをスタートできました。


彼は受験に向けた学習にも取り組めるようになり、予想通り自分なりの高校へのイメージを具体的に持てるようなりました。その後第一希望の高校へ無事進学を果たすことができました。

4.心理的要因による不登校への対応の重要性

この事例からもわかるように、心理的要因で不登校になる子どもたちは、表面的な「行きたくない」という感情の奥に、深い内面的な葛藤を抱えています。そのため、親としては焦らず、表面化して言語化されている感情以外にも複雑な心理状態があることを理解しましょう。

この記事で紹介したケースでは、カウンセラーの訪問を通じて彼の気持ちを整理し、少しずつ自信を取り戻すことで、再び学校生活に適応できるようになりました。しかし、すべてのケースが同じように進むわけではありません。それぞれの子どもが抱える問題は異なるため、その子に合った支援方法を見つけることが大切です。

5.親と子どもが共に歩むためのサポート

不登校は、親にとっても大きな試練です。しかし、子どもの心理的な問題にしっかりと向き合い、適切なサポートを提供することで、解決への道が開けます。もし、この記事を読んでいるあなたが、子どもの不登校に悩んでいるのであれば、まずは焦らず、子どもの心の声に耳を傾けることもとても大切です。しかし、本人が「なぜ自分がこのような状況になっているのか分からない」ケースが多くあります。必要に応じて専門家の力を借りながら、本当の子ども自身の気持ちに気づきを与えることも選択肢のひとつに入れてください。

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