
不登校になってしまった子どもをもつ親は対応をどうすればいいのかしら

また学校を休み始めて不登校になってしまった。親の前回の対応が間違っていたのか不安だわ
子どもが不登校になった場合の対応は、多くの方にとって初めての経験となるはずです。子育てにおいて想定していなかった事態に動揺をしてしまい、どう対応していいか戸惑ってしまう方がほとんどではないでしょうか。
何事においても初期の対応は難しいものであり、それでいてとても重要なものでもあります。どのポイントを押さえておくかを知っているだけでも、取り組みまでの時間が早くなり、親御さんの心の持ちようにもいくらか余裕が生まれてくるはずです。
今回は、子どもが不登校になった時に何から手を付ければいいのか、どこに注意を払わないといけないのかを紹介いたします。
不登校知っておく
不登校の対応でまずすべきことは、不登校のメカニズムの理解です。不登校は、子どもが学校に行くことを避ける状態であり、その背後には多様なストレス要因が存在します。文部科学省によると、不登校の原因は家庭、学校、個人的な問題に起因することが多いです【文部科学省, 2023】。
不登校の定義
文部科学省の定義では、「不登校」とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的、または社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくてもできない状態にあることを指し、その状態が年間30日以上続く場合」を指します【文部科学省, 2023】。
不登校のメカニズム
不登校のメカニズムとしては、ストレス要因が学校もしくは学校に行くこと自体にあり、ストレッサー(ストレスを与えるもの)である学校を回避しようとする状態です。具体的には、学校にストレスになることがある、もしくは学校へ行くための友人関係や勉強にストレスを感じるため、心身ともに楽な家に居たくなる状態です。
内的要因(本人の性格傾向、気質、特性)と外的要因(きっかけとなる出来事)が組み合わさって不登校が発生します。内的要因には、感受性の高さやコミュニケーションの難しさが含まれます。外的要因には、いじめ、学業のプレッシャー、家庭内の問題などが挙げられます。
不登校の対応でまずすべきことは
不登校前と不登校後の記録を取ることが重要です。最近休み始めた場合、その前後の状況や変化を具体的なエピソードとして記録しておきましょう。例えば、「10月7日 22時 部屋で一人泣いているのをはじめて見た」というメモを残すだけでも、支援者がその前後を把握する手助けとなります。
記録の重要性
精神疾患が疑われる場合はクリニックでの対応が優先されますが、不登校後に起きた症状の場合は不登校問題の改善によって症状がなくなることもあります。したがって、専門機関との連携が重要です【文部科学省, 2023】。
具体的な状況で構いません。例を挙げてみましょう。 「10月7日 22時 部屋で一人泣いているのをはじめて見た」 このようなメモを残しておくだけで,ひとりで泣きだすようなことが10月7日から起きていたことが分かります。ポイントは時間と場所です。
親の対応
親としては、まず冷静に子どもの話を聞くことが重要です。親が子どもの話を最後まで聞いてあげることで、子どもは安心感を持つことができます。親が救おうとする気持ちが強すぎると、子どもは弱者扱いされたと感じることがあります。無理に解決しようとせず、子どもの気持ちを尊重する姿勢が大切です【文部科学省, 2023】。
きょうだい(兄弟,姉妹)がいる場合は
不登校になった子どもへのケアが必要ですが、きょうだいにも影響があることを理解しておくことが重要です。きょうだいが「私も休みたい」と言い出すことや、不公平感を感じることがあるため、学校を休まず行けているきょうだいをしっかりと肯定し、「頑張っているね」と声をかけることが大切です【杉本, 2022】。
きょうだいへの影響
特に、学校に通うことができているきょうだいが感じるストレスを軽減するため、適切なサポートと認識が必要です。親は不登校の子どもだけでなく、学校に通うきょうだいにも目を向け、バランスの取れた対応を心掛けるべきです【藤田, 2021】。
親の配慮
きょうだいがいる場合、親は全体のバランスを取るために、きょうだいが頑張っていることを認め、感謝の気持ちを伝えることが重要です。例えば、「学校に行けていることは素晴らしいよ」と肯定的なフィードバックを与えることが効果的です【文部科学省, 2023】。
不登校のネット使用で起きる問題
不登校中の子どもたちのネット使用やオンラインゲームにより、ゲーム障害(ネット依存)が起きる可能性があります。また、昼間や夜中にネットを使用することで、見知らぬ人とのつながりが増え、トラブルに巻き込まれるリスクもあります【厚生労働省, 2022】。
以下のグラフは、厚生労働省が提供するネット依存症の年齢別発症率を示したものです。

実際に、不登校の子どもがネットで知り合った人と会おうとしたり、家に招いたりするケースも報告されています。これらの問題を防ぐためには、親が子どものネット使用状況を把握し、適切に管理することが重要です【文部科学省, 2023】。
ケーススタディ
- 年の近いひきこもり青年と会おうと言われて遠方に一人で行こうとしていた
- 年齢の近い不登校の生徒に泊まりにおいでと誘われて行こうとしていた
- ネットで知り合った異性を親の知らない間に家にあげていた(隠れていた)
- ネットで知り合った不登校児の親からの「高性能のゲーミングパソコンを買ってあげたほうが子どものためになる」という電話を子どもが取り次いできた。
ネットの使用の制限のポイント
急激な制限は問題が起きやすいため、家族で話し合いながらルールを作ることが重要です。ゲームやネットの制限をかけることが不登校の解決にはならないため、無理な制限は避けましょう【厚生労働省, 2022】。
制限の方法
日中のオンラインゲームを避けたり、使用時間を制限することが推奨されます。また、きょうだいがいる場合は、ゲームやネットの使用時間や場所に注意し、心理的な負担を減らすことが重要です【吉田, 2020】。
家族会議の重要性
家族で話し合いながら、無理のないルールを設定することが大切です。ルールを決める際には、子どもたちの意見も取り入れ、公平なルールを作ることが信頼関係の構築につながります。無理に制限をかけるのではなく、徐々に適切な使用方法を身につけさせることが大切です【文部科学省, 2023】。
制限の実施例
例えば、以下のようなルールを設定することが考えられます。
- 使用時間の制限:1日2時間までとする。
- 使用時間帯の制限:昼間の使用を避け、夕食後1時間のみ許可する。
- 使用場所の制限:共用スペースでの使用のみ許可し、プライベートな部屋での使用は禁止する。
これにより、ネット依存のリスクを軽減し、家庭内でのトラブルを避けることができます【厚生労働省, 2022】。
まとめ
不登校の子どもを持つ親が取るべき対策を効果的にまとめると、以下のポイントに集約されます。
不登校の理解
不登校の背景にある内的要因と外的要因を理解し、それらを区別して対応することが重要です。これにより、根本的な原因にアプローチしやすくなります。
変化の記録
不登校に至る前後の子どもの行動や心理状態の変化を詳細に記録します。この情報は専門機関への相談や日常の対応策を考える際に役立ちます。
兄弟姉妹への配慮
不登校の子どもだけでなく、家族内の他の子どもたちへの影響も考慮し、彼らの精神的な負担を軽減するための支援を行います。これには、学校に通っている兄弟姉妹の努力を認め、肯定することが含まれます。
ネットとゲームの利用管理
不登校の子どもがインターネットやゲームに過度に依存するリスクを管理するため、適切な使用制限を設けます。特に、不登校が長引くと依存症のリスクが高まるため、早期の段階で制限を考えることが望まれます。
専門機関との連携
必要に応じて学校や専門機関と連携し、子どもの状況に合わせた適切な対応策を検討します。子どもの不登校は,精神的な問題、隠れた発達課題、過去の成育歴から現在の状況など、心理的専門な分析と対応が求められます。心理職がおられる機関に相談しましょう。
無理に問題を解決しようとせず、子ども自身が安心できる環境を提供することも、不登校からの回復への第一歩となります。制限などをかけるなど反作用の予測できる対応は思い付きで行わず、専門機関の助けを借りることも重要ですので、必要に応じて適切な支援を受けることを考えましょう。
参考文献
- 文部科学省 (2023). 不登校の現状と対策
- 藤田 真一 (2020). 「不登校児童生徒への対応に関する研究」. CiNii 論文データベース
- 鈴木 健一 (2021). 「不登校の心理と支援に関する実践研究」. J-STAGE
- 山田 太郎 (2019). 「不登校の背景と対応」. 国立教育政策研究所
- 厚生労働省 (2022). ネット依存対策